オドントネマ

　亜熱帯植物園を散策中、鬱蒼とした茂みの中に、見慣れない植物が群生しているのを見かけました。
　草丈は1ｍを超え、長楕円形の葉を根元から繁らせ（対生）、長い花序をまっすぐ伸ばしています。

　亜熱帯性の植物のようでしたので、植物園で調べていただいた結果、オドントネマと分かりました。
　円錐状に、たくさんの蕾がついており、夏になると、朱色の花を咲かせるそうです。　

　図鑑によると、メキシコ、中央アメリカ原産の多年草で、花期が長く、鮮やかな赤色の管状花を順次咲かせるそうです。繁殖力が旺盛で、種子島や沖縄では野生化しているようです。
　花は、引き続き観察したいと思います。とりあえず、【４月の野の花】のページに掲載しておきます。

　酷暑が続く８月初め、赤い管状花の下見に出向いたところ、４月には、円錐状のたくさんの蕾をつけて出揃っていた長い花序の姿が全くありません。
　近づいてよく見ると、長い花序は枯れて消失し、全滅状態です。辛うじて一部姿をとどめている花序を１本見つけたので、観察を続けてみます（５～６段目の３枚の写真）。
　
　なお、植物園によると、今年の異常高温と寡雨で、蕾を付けた花序が全部枯死し、勢いよく繁っていた葉っぱも萎れたままで、かなり株数が減ったとのことです。
　赤い管状花の観察は、来季に期待したいと思います。

　翌年の2014年、６月からオドントネマの観察を始めたのですが、わずか２本の花序を残して、ほとんどが生育不良状態です（６段目右側の写真）。
　この貴重な２本の花序に、無事、赤い管状花が咲くとよいのですが‥･。

　７月に入り、２本の花序は何とか形状を保っていましたが、あまりよい生育状況ではなさそうです‥‥（７段目左側の写真）。

　雨が多く晴天の少なかった今夏、２本の花穂の様子が気掛かりでしたので、８月下旬再訪したところ、赤い管状花どころか、花穂は枯死状態でした‥（７段目右側の写真）。　　残念です。赤い管状花は来季に期待したいと思います。

　９月上旬、サンショウモドキの花を観察した帰路、オドントネマの茂みを見て、びっくり‥‥。
　諦めていたはずのオドントネマが、大きな葉っぱの間から、数本の赤い花穂を数本を伸ばしているではありませんか。
　近寄ってみると、蕾の数はまばらですが、赤い蕾が確実に膨らみ始め、トレードマークの管状花の開花はこれからのようです。
　記録のため、その時撮影した写真をとりあえず掲載しておきます（８～９段目の４枚の写真）。

　引き続き、観察を続けました（１０段目の２枚の写真）。

　10月21日、オドントネマの観察に再訪したところ、オドントネマが生えていた一帯が更地化され、びっくりしました。

　アカギやソウジジュ、クロツグが繁り、樹下にはオドントネマのほかに、アオノクマタケラン、ハラン、クワズイモ、タキキビ等が混生している一帯で、これらの貴重な植物が姿を消し、観察できなくなっていました。
　植物園によると、新たな温室建設用地とするため、周辺一帯の植物と共に除伐したとのことでした。
　
　幸いなことに、園内の培養コーナーでもオドントネマを育てているとのことで、係の方に案内していただきました。
　鬱蒼とした茂みの中とは打って変わって、日当たりのよい生育環境のせいか、たくさんの花序を元気よく伸ばしています。

　繁殖力が旺盛で、花期も長く、鮮やかな赤色の管状花を順次咲かせるオドントネマらしく、見事な赤い管状花を咲かせていました。
　その時撮影した写真を追加しました（１１～１３段目の５枚の写真）。
　
　なお、本来の花期は夏ですが、掲載ページを　【９月の野の花】に変更しました。